2014年1月27日月曜日

上腕骨遠位端部骨折

3.遠位端部骨折

特徴
遠位端部骨折が最も多い
幼少児に多発
変形、機能障害を残しやすい
分類
1.顆上骨折
2.内側上顆骨折
3.外側上顆骨折
4.通顆骨折
5.内顆骨折
6.外顆骨折
7.小頭骨折
8.滑車骨折
9.複合骨折


a.上腕骨顆上骨折
特徴
1問題が多く難しい骨折
2.幼少児に多発
3.肘周辺の骨折で最も多い
発生機序
1.伸展型骨折 (多)
転んで手をついた ⇛ 肘関節が過伸展
2.屈曲型骨折 (少)
転んで肘をついた ⇛ 肘関節が過屈曲(前方凸)
骨折線と
骨片転位
1.伸展型骨折
骨折線:前方から後上方
内反転位 ⇛ 内反肘
転位:後上方転位
2.屈曲型骨折
骨折線:後方から前上方
転位:前上方転位
症状
1.腫脹
肘周辺に著明
2.疼痛
限局性圧痛。運動内生、自発痛
3.機能障害
肘の運動障害
4.異常可動性、軋轢音

5.変形
伸展型骨折では肘関節後方脱臼に類似
6.肘の厚さ(前後径)と幅(横幅)の増大

7.神経損傷
正中神経(多)
伸展型
橈骨神経(多)
尺骨神経(少)
肘関節診断
1.ヒューター線
内側上顆から外側上顆の直線
2.ヒューター三角
肘関節屈曲時の内・外側上顆、肘頭を結ぶ三角形
相違点

上腕骨顆上伸展型骨折
肘関節後方脱臼
年齢
幼少児に多い
青壮年に多い
疼痛
限局性圧痛
連続的脱臼痛
腫脹
すみやかに出現
漸次出現
他動運動
異常可動性
弾発性抵抗
ヒューター線
肘頭正常位
肘頭高位(乱れる)
上腕長
短縮
不変
前腕長
不変
短縮
ファットパッド
サイン
・脂肪組織が関節包の関節内血腫で後方に押し出される(浮き上がる)
整復前の注意
1.骨片転位の確認
捻転転位(内旋)に注意
2.神経損傷の確認
知覚を調べる 参考 URL
3.血管損傷の確認
・最も重要
・健側の撓骨動脈と比較
フォルクマン拘縮に注意
整復法
1.伸展型骨折
 
a.その1 神中一人整復法 転位小
 1.肘関節を鈍角位、前腕回内位 ⇛ 末梢牽引
 2.肘頭を後方から直圧
 3.同時に肘を屈曲
 4.肘をやや鋭角で固定
b.その2 転位大
 1.肘関節を鈍角位、前腕回内位 ⇛ 末梢牽引
 2.回旋、屈曲、側方転位の整復
 3.肘頭を後方から前下方に直圧
 4.肘関節90-110度まで屈曲(前腕中間位)
2.屈曲型骨折
1.肘屈曲
2.遠位骨片を前上方から後下方に圧迫
固定法
1.伸展型骨折
肘関節90-100
前腕回内位(内反肘防止)
・上腕-MP関節手前
・約4W固定
2.屈曲型骨折
肘関節80-90
前腕中間位
X線像による
評価

参考 URL
1.BA
Baumann's Angle バウマン角)
増加:外反肘
正常10-20
減少:内反肘
2.TATilting Angle 傾斜角)
減少:伸展転位の残存
正常45
3.CACarring Angle 運搬角)
増加:外反肘
正常5-10
減少:内反肘
合併症
1.循環障害
阻血5P(疼痛、蒼白、脈動消失、感覚異常、麻痺)
2.神経障害
正中神経(多)
橈骨神経(多)
尺骨神経(少)
3.皮膚障害
開放性骨折(肘関節屈側部 伸展型骨折)
後療法
1.注意点
再転位、血管・神経損傷
2.目的
関節拘縮予防 ⇛ ROMRange Of Motion 関節可動域)改善
3.手段、方法
自動運動主体
後遺症
1.フォルクマン拘縮
過度の緊縛固定 ⇛ 前腕屈筋の阻血
※手関節:屈曲、MP関節過伸展、PIPDIP:屈曲
症状が出たら固定を解いて病院へ
2.外傷性骨化性筋炎
・早期の固定解除
・過度の運動療法
3.屈曲障害

4.内反肘
・内膜の方が厚い

b.上腕骨外顆骨折
特徴
1肘周辺の骨折発生頻度 2
2.幼少児に多発
3.捻挫と誤診しやすい
4.偽関節を発生
5.外反肘変形
6.遅発性尺骨神経麻痺20-30年後に発生)
発生機序
1.Pull off
(引っ張り型)
1.肘伸展位で手を衝いて転倒
2.肘内転強制
3.前腕伸筋群に外果が引っ張られ骨折
 ⇛ 短・長橈側手根伸筋、尺側手根伸筋(外側上顆に付く筋)
2.Push off
(ぶつかり型)
1.前腕回内位で手を衝いて転倒
2.橈骨頭と外顆がぶつかる
骨片転位
転位が大きいものは回転転位
症状
1.腫脹
外顆部
2.疼痛
外顆部
3.機能障害
肘の運動障害(軽度)
腕尺関節(蝶番):無事 (屈曲)
橈尺関節(球):障害 (回内・外)
4.異常可動性、軋轢音

整復法と
固定法
1.転位 小
1.末梢牽引
2.骨片を外上方から内下方へ直圧
3.固定
・肘直角位
・前腕中間位
・上腕-MPJ手前
3W-4W
2.転位 中
1.肘伸展 + 回外位 (前腕伸筋群の弛緩)
2.末梢牽引
3.肘の内転 (外側関節裂隙を拡げる)
4.骨片を内上方に圧迫
5.固定
80
前腕回外位
・上腕-MPJ手前
5W
3.転位 大
回転転位
観血療法
後遺症
1.偽関節
回転転位のため
2.外反肘
成長とともに発生
3.遅発性尺骨神経麻痺
・外反肘とともに発生
手の痺れ、握力低下、
鷲手
・尺骨神経の退行性変性(老化)


c.上腕骨内側上顆骨折
特徴
1肘周辺の骨折発生頻度 3
2.少年期から思春期に好発
発生機序
1.介達外力 (多
肘関節に急激な外転力
前腕屈筋群、内側靭帯
牽引されて裂離骨折
※肘関節の脱臼時に多発

2.直達外力 (少)


骨片転位
1.前下方転位
前腕屈筋群、円回内筋の作用
2.骨片が肘関節包内へ迷入
(肘関節脱臼時)
観血療法
3.骨端線離開
12-15歳) ⇛ 内側上顆ができていない
症状
1.内側に腫脹
2.限局性圧痛、運動痛
3.機能障害、肘の屈伸障害
4.異常可動性、軋轢音
整復固定法
1.転位のない骨折
・整復必要なし
・固定:良肢位
肘直角位、前腕中間位
2.転移のある骨折
・整復
筋を緩める肢位
・肘直角位、前腕回内位
・骨片を直圧
・固定
筋を緩める肢位
・肘直角位、前腕回内位、手関節掌屈
・約6W-7W
後療法
温熱、手技、運動
後遺症
・肘関節伸展障害
拘縮、痛み
・前腕回内制限
痛み
・尺骨神経麻痺
鷲手