2014年2月9日日曜日

前腕骨骨幹部骨折

2.前腕骨骨幹部骨折
特徴
1.頻度が高い
2.脱臼を合併することもある
3.前腕の回旋障害(回内・回外)を残す
分類
1.橈骨単独骨折
2.尺骨単独骨折
3.橈尺両骨骨折

a.橈骨単独骨折
特徴
橈骨に付着する筋により骨片転位が変わる
発生機序
1.介達外力 (多)
・手掌を衝いて転倒
2.直達外力 (少)
・橈骨をぶつける
※筋が厚い、橈側はぶつかりにくいため少ない
骨折型
若木骨折(小児)、斜骨折(介達外力)、横骨折(直達外力)、骨片骨折(成人)
定型的骨片転位
1.回内に関与する筋
1.円回内筋
2.方形回内筋
2.回外に関与する筋
1.回外筋
2.上腕二頭筋
a.円回内筋付着部より近位での骨折
近位骨片 : 回外位
遠位骨片 : 回内位
b.円回内筋付着部より遠位での骨折
近位骨片 : 中間位
遠位骨片 : 回内位
症状
1.変形
2.腫脹
3.疼痛
4.機能障害 : 肘の屈曲障害、前腕の回旋(回外)障害
5.軋轢音・異常可動性
整復法
a.円回内筋付着部より近位での骨折
回外位牽引 + 直圧
b.円回内筋付着部より遠位での骨折
中間位牽引 + 直圧
※近位骨片に合わせる
固定法
a.円回内筋付着部より近位での骨折
回外位固定
小児 4-5W
成人 6-8W


b.円回内筋付着部より遠位での骨折
中間位固定

ガレアジ(逆モンテギア)骨折
骨折
橈骨骨幹部中・下1/3境界部
脱臼
遠位橈尺関節(尺骨頭)
・背側に脱臼 (多)
・掌側に脱臼 (少)
特徴
1.まれ
2.脱臼骨折
3.再転位、再脱臼が多い ⇛ 不安定型
4.ope 多い



b.尺骨単独骨折
特徴
1.頻度が低い
2.直達外力が多い
3.障害は残らない
4.モンテギア骨折には注意
発生機序
1.直達外力 (多)
・頭、顔を守った際に尺骨を強打
・覆う筋が薄い
2.介達外力 (少)
・転倒して手を衝き前腕に過回内力が働いた
骨折型
1.好発部位
遠位1/2
2.斜骨折、横骨折、楔状骨片
3.転位が少ない
橈骨が副子の役割
筋の停止部が少ない
4.転位は外力の方向で決まる
症状
1.腫脹
・尺側と背側
2.疼痛
3.回内、回外障害
4.軋轢音、異常可動性
整復法
※整復前の注意
・尺骨は背側凸の形
・骨間隙(橈骨と尺骨の間)の保持
・血行障害の確認
1.肩軽度外転位、肘伸展位、前腕回外位
⇛ 伸筋の弛緩
2.末梢牽引 + 直圧
固定法
肢位
肘:直角位、前腕:中間位
期間
小児:4-5W 成人:6-8W

モンテギア骨折
特徴
1.介達力(回内力)で発生
2.尺骨骨幹部上・中1/3境界部骨折 + 橈骨頭の脱臼
3.伸展型(多)屈曲型(少)
4.整復、固定が困難
障害が残る(橈骨頭脱臼)
5.最初に尺骨の骨折を整復し次に橈骨頭の脱臼を整復(通常の骨折とは逆)
6.小児 > 成人
分類
a.伸展型(前方型) 多
尺骨:前外方凸変形
橈骨:前外方に脱臼
b.屈曲型(後方型) 少
尺骨:後方凸変形
橈骨:後方に脱臼
整復法
a.伸展型
opeが多い
1.肘:屈曲・回外位で末梢牽引
橈骨頭が入るスペースを作る
2.骨折部に直圧
3.橈骨頭を押し込む
b.屈曲型
1.肘:伸展・回外位で末梢牽引
2.骨折部に直圧
3.橈骨頭は同時に戻る
固定法
a.伸展型
肘:鋭角屈曲位 ⇛ 近位骨片を遠位骨片に合わせる
前腕:回外位
b.伸展型
肘:ほぼ伸展位
前腕:回外位
合併症・後遺症
1.橈骨頭の再脱臼
2.尺骨の遷延治癒又は偽関節
3.尺骨の変形治癒
4.橈骨神経麻痺
(後骨間神経麻痺)
下垂指(ドロップフィンガー)

c.橈尺両骨骨幹部骨折
特徴
1.治療が困難
2.治療の長期化
3.合併症が多い(成人)
4.opeも多い
※転位が高度な
ものの難治理由
1.2本同時の整復は難しい
2.再転位しやすい(両骨片が接近しやすい)
3.きつい包帯(固定)が必要 ⇛ 循環障害
4.遷延治癒、偽関節になる
5.橋状仮骨(架橋) ⇛ 前腕回旋障害
6.固定が長期化  ROM制限
発生機序
1.直達外力
・前腕に強力な外力
横骨折(粉砕骨折)
橈尺両骨が同高位で骨折
2.介達外力
・転倒して手を衝いた
斜骨折(螺旋骨折)
橈骨は近位、尺骨は遠位で骨折 ⇛ 骨が細い所で骨折
転位
1.小児の場合
遠位1/3の骨折が多い
不全骨折(若木骨折)
・骨折部が角状突出する
2.青壮年の場合
・転位大・直達外力
非定型的転位
橈骨転位 大、尺骨転位 小
定型的転位
※定型的転位
a.円回内筋より
近位での骨折
近位骨片 : 回外位
円回外筋、上腕二頭筋
遠位骨片 : 回内位
円回内筋、方形回内筋
b.円回内筋より
遠位での骨折
近位骨片 : 中間位
回外筋、上腕二頭筋、円回内筋
遠位骨片 : 回内位
方形回内筋
症状
1.肘伸展又は軽度屈曲位
2.変形、開放性骨折もある
3.腫脹
4.疼痛
5.異常可動性、軋轢音
6.回旋障害
整復法
a.円回内筋より
近位での骨折
1.回外位で牽引
2.尺骨を直圧
3.橈骨を直圧
b.円回内筋より
遠位での骨折
1.中間位で牽引
2.尺骨を直圧
3.橈骨を直圧
固定法
a.円回内筋より
近位での骨折
回外位固定
b.円回内筋より
遠位での骨折
中間位固定
後療法
受傷-2.3W
再転位に注意
- 4-6W
自動運動開始(回旋に注意)
後遺症・合併症
1.変形治癒
2.偽関節
3.橋状化骨(架橋)
4.遷延治癒
5.回旋障害
6.阻血性拘縮


前腕骨近位端部骨折

前腕骨骨折
特徴
・橈骨、尺骨の骨折がある
頻度が高い
近位端、骨幹部、遠位端部に分類
脱臼骨折もある
分類
1.前腕骨近位端部骨折
a.橈骨近位端部骨折
頭部、頚部
b.尺骨近位端部骨折
肘頭
c.橈尺両骨近位端部骨折
2.前腕骨骨幹部骨折
a.橈骨骨幹部骨折
ガレアジ骨折
b.尺骨骨幹部骨折
モンテギア骨折
c.橈尺両骨骨幹部骨折
3.前腕骨遠位端部骨折
a.橈骨遠位端部骨折
コーレス、スミス、
バートン、ショーファー骨折
b.尺骨遠位端部骨折
c.橈尺両骨遠位端部骨折


1.前腕骨近位端部骨折
a.橈骨近位端部骨折
特徴
1橈骨頭骨折
成人に多い
2.橈骨頸部骨折
小児に多い
機能障害 大
発生機序
1.直達外力 (少)
2.介達外力 (多)
・前腕回内位で手を衝いた
・肘に外反強制
骨折型
1.成人の場合
(転位のある骨折)
⇛ 頭部骨折が多い
1.橈骨頭外側縁 (多)
2.橈骨頭内側縁
3.頚部が転位
4.頚部が傾斜
5.粉砕骨折
2.小児の場合
⇛ 頚部骨折が多い
オブライエンの分類
外側に傾斜(0-30度) 軽度
外側に傾斜(30-60度) 中度
外側に傾斜(60-) 高度
軽度は自家矯正可
中度、高度は不可 ⇛ ope
症状
1.腫脹
軽度関節内骨折) ⇛ 関節内血腫
2.疼痛
運動痛(回内・回外時
3.運動障害
回内・回外
4.外反変形
骨折が高度
整復法
頚部骨折の場合
1.肘を伸展 + 内転
2.橈骨頭を上内側に直圧
3.肘回外 + 鋭角屈曲
固定法
肢位
肘直角位、回外位
範囲
上腕-MP手前
期間
小児2-3W 成人3-4W
後療法
肘の自動運動(長期になる
合併症
骨折
小頭、内側上顆、外顆、肘頭
脱臼
肘関節後方脱臼
関節内遊離体
(関節ねずみ)
骨片、軟骨(多)
外反肘
橈骨頭の成長障害による


b.尺骨近位端部骨折(肘頭骨折)
特徴
1.成人に多く、小児に少ない
2.肘の伸展障害
肘頭が上腕三頭筋で作用できない
発生機序
1.直達外力(多)
肘屈曲位で肘頭を強打 ⇛ 横骨折、粉砕骨折
2.介達外力(少)
1.肘の過伸展 ⇛ 多くは肘関節脱臼になるため少ない
2.上腕三頭筋の牽引力による裂離骨折
分類
1.裂離骨折
関節内骨折
2.完全骨折(多)
関節内骨折
3.関節外骨折
関節外骨折
4.粉砕骨折
関節内骨折
症状
1.疼痛
限局性圧痛
2.腫脹
波動を触れる
3.陥凹の触知
離開の証明
4.変形
近位骨片の後上方転位
5.肘の運動障害
自動屈曲 可
自動伸展 不可
骨片転位
延長転位
上腕三頭筋による近位骨片の転位
合併症
1.肘関節前方脱臼
まれ
2.尺骨神経麻痺
鷲手(手掌伸展、DIP屈曲)
整復法
1.肘の伸展位
上腕三頭筋の弛緩
2.近位骨片を直圧
離開1cm以内 ⇛ 非観血的
離開1cm以上 ⇛ ope
固定法
ほぼ伸展位
前腕
回外位 ⇛ 前腕2本が平行な状態
後療法
1-2W
再転位に注意
3-4W
固定を徐々に屈曲
4-6W
骨癒合、自動運動