2013年11月10日日曜日

顔面・頭部の軟部組織損傷

軟部組織損傷
A.外傷性顎関節損傷(顎関節捻挫)
特徴
・スポーツ外傷、転倒、事故などを原因とする直達性、下顎部からの介達性に顎関節部に外力がは作用した場合に発生しやすい
・顎関節を構成する靭帯、関節包、関節円板の損傷で骨折は伴わない
症状
・腫脹、圧痛が著明
・疼痛のため関節運動制限
・関節円板の偏位を伴うと開口、閉口運動が障害される
治療法
・初期には冷湿布、経過に従い理学療法
・硬いものを食べないなどの比較的安静を指示
注意点
・捻挫ではX線像での特別な所見は見られないが下顎等の骨折を合併するものもあるので注意が必要
高度の損傷症状を示す場合は、関節円板の挫滅、関節包の破綻、高度な関節腔内出血を想定するべき
・関節円板損傷などが想定されるときには口腔外科での観血治療を必要とする場合がある
・受けた外力が大きい場合は脳神経外科での受診を指示
予後
10日程度の科料で軽快する場合がほとんど

B.頭部、顔面部打撲
特徴
・頭部及び顔面に種々の事象により直接打撃を受けて起こる
頭部、顔面は血流が盛んで小動脈損傷による皮下出血量が多い
・出血の際は止血処置を施し感染症予防、開放創閉鎖の処置を行うため外科医に託す
強大な外力であったことが想定される場合は脳神経外科の受診を指示


C.顎関節症
定義
・顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節雑音、開口障害ないし運動異常を主要症状とする慢性疾患群の総括的診断名であり、その病態には咀嚼筋障害、靭帯損傷、関節円板障害、そして変形性関節症などが含まれる
診断
・顎関節や咀嚼筋などの疼痛がある
・関節雑音がある
・関節症がいないし運動異常がある
上記の主要症状のうち少なくともひとつある場合とする
分類
顎関節症I
咀嚼筋障害
顎関節症II
関節包、靭帯障害
顎関節症III
顎関節内障
顎関節症IV
変形性顎関節症
顎関節症V
精神的因子によるもの

1.顎関節症I
概念・症状
筋症状を主体とする
咀嚼筋群の疼痛を認める。筋・筋膜の痛みの原因には咀嚼筋感の調和の乱れ、筋スパズムがあるといわれている
・ストレスによる影響も考えられ歯ぎしり、噛み締めなども一因とされている
診断
咀嚼筋のみの圧痛を認め顎関節部の圧痛は認めない
・咬合不全、歯ぎしり、噛み締めの悪習慣の有無を調べる
X線所見では顎関節の形態変化や異常を認めない
治療法
疼痛対策
鎮痛剤、筋弛緩剤の投与が医師から支持されることがある
理学療法
筋の手技療法
スプリント療法
咬合不全や咬合異常の場合に行う

2.顎関節症II
概念・症状
・オトガイ部の強打、過度の開口などで起こる靭帯損傷、関節包損傷、関節円板挫滅、関節捻挫などの慢性外傷性病変
圧痛、咬合、咀嚼時や顎関節運動時に疼痛を覚えるが顎関節雑音を伴わない場合が多い
診断
X線、MRICT関節造影などを行い検査。一般には円板の転位や顎の異常所見はない
・関節鏡所見では滑膜のびらんや円板の微細な損傷を一分に認める
・開口障害を認めるが、強制的な開口は可能でIII型との鑑別になる
治療法
疼痛対策
非ステロイド性抗炎症剤NSAIDs)の投与とともに顎の安静を指示
スプリント療法
スタビライゼーション型スプリント
咬合挙上、下顎位の修正


3.顎関節症III
概念・症状
顎関節症では一番多い
円板の前内方転位、円板変性穿孔、線維化などが見られる
相反性クリック(IIIa型)円板の前方転位が復位するもの
開閉口時、下顎等が円板の後方肥厚部を通過する際に関節雑音が生じる
クローズドロック(IIIb型)前方転位が復位しないもの
相反性クリックの前方転位が進行したもので開口時、円板の肥厚部を乗り越えられず開口障害を示しクリックを認めない
・主な原因は咬合異常が考えられる
診断
X線、CT、関節内視鏡検査などを行い診断
治療法
・不快症状の除去に対してはクリック、顎関節痛、開口障害を目標に治療
・相反性クリックに対しては下顎前方復位型スプリントを装着
・クローズドロックに対しては整復、パンピング、ピボットスプリントの装着
・まずは保存療法をおこない効果が無い時は関節鏡視下手術、円板制服ないし円板置換を首都する関節内症手術を行う
パンピング:関節腔へ局所麻酔剤や生食の注入と吸収を繰り返す方法

4.顎関節症IV
概念・症状
.軟骨破壊、骨増殖、下顎頭変形、円板穿孔など進行性の病変が主体
主病変は下顎等に出現することが多いが関節窩に生じるものもある
II型、III型の合併や相互に移行を繰り返すものがある
・原因は咬合異常による顎関節への外傷性因子、低位咬合などがあげられる
診断
顎関節雑音(クレピタス)がみられ、徐々に開口障害の程度が増強
X線で骨肥厚像、骨硬化像、下顎頭変形が見られる
治療法
・保存療法は根本的治療とはなり得ないが薬物療法、スプリント療法、理学療法を行う
・観血療法では下顎頭修正術、関節結節修正術が行われる

5.顎関節症V
概念・症状
心因性顎関節症とも言われ、精神心理的要因が主たるものである
・病態は顎関節部の違和感で主症状は咀嚼機関に見られる多種多様な不定愁訴である
治療法
心理面からの治療が必要。抗不安薬の投与で改善すればV型が疑われる
不定愁訴:原因がはっきりしない

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