顎関節の脱臼
顎関節の機能解剖
・下顎骨の下顎頭と側頭骨の下顎窩との関節
・関節円板
・顎関節は外側靭帯、蝶下顎靭帯、茎突下顎靭帯により補強
・運動は主に咀嚼運動とともに左右の関節が共同で
1.下顎体の上下運動
2.下顎骨の前進と後退
3.臼磨運動(側方への回旋運動)
上記の3種類の運動も行われる
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下顎骨の解剖
・顔面下部を占める骨で下顎枝と下顎体からなる
・下顎枝は筋突起と関節突起からなる
・関節突起は下顎頭と下顎頚からなり下顎頭は側頭骨の下顎窩と顎関節をつくる
・下顎頚の内側面に翼突筋窩があり外側翼突筋が停止
・筋突起は下顎切痕を挟む関節突起の前方の突起で側頭筋が停止
・下顎角の外側面は咬筋粗面があり咬筋が停止し内側面は翼突筋粗面で内側翼突筋が停止 |
顎関節の運動
受動的な開口
(無意識の開口)
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・関節円板と関節頭との間での骨頭回転運動のみ
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能動的な開口
(意識的に口を大きく開ける)
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・上記骨頭回転運動と関節窩と関節円板の間で関節円板が前方に滑る運動が同時に起こり前方に移動する
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顎関節の筋肉・靭帯
起始
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停止
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神経
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作用
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咬筋
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頬骨弓
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咬筋粗面
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下顎神経
(三叉神経第3枝)
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下顎骨の挙上
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側頭筋
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側頭鱗
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筋突起
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下顎骨の挙上
下顎骨の後方移動
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外側翼突筋
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蝶形骨
(翼状突起)
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下顎頚
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下顎骨の前方移動
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内側翼突筋
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下顎骨の内面
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下顎骨の挙上
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脱臼
特徴
・顎関節は正常可動域内でも不全脱臼形を呈する
・関節包を破ること無く脱臼する
・女性に多い(女性のほうが関節窩が浅い)
・前方脱臼が多い
・習慣性脱臼や反復性脱臼になりやすい
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分類
顎関節脱臼
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前方脱臼
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両側脱臼
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片側脱臼
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後方脱臼
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側方脱臼
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A.前方脱臼
発生機序
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・極度の開口時(あくびなど)に関節頭が関節結節を超え前方に転位し
外側靭帯、咬筋、外側翼突筋により固定 ⇛ 両側脱臼が多い
・開口時の衝突、打撃などの下顎側方からの外力で発生 ⇛ 片側脱臼が多い
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症状
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両側
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・開口不能になり唾液流出、咀嚼、会話不能
・下顎歯列は上顎歯列の前方に偏位
・耳の前方に陥凹した関節窩を触れ関節頭は陥凹した関節窩の前方に触知
・弾発性固定
・頬は扁平、関節窩は空虚
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片側
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・両側脱臼ほど著明ではない
・半開口で口の開閉はわずかに可能
・オトガイ部は健側に偏位
・患側の耳孔前方に陥凹を触知
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整復法
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口内法
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・ヒポクラテス法
・ボルカース法
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口外法
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注意点
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・整復への不安感を取り除き心身の緊張を解かせる(咀嚼筋の緊張緩和)
・口内法の場合は特に指の消毒、滅菌ガーゼの使用
・感染症予防の観点よりゴム手袋をつける事が望ましい
・鼻吸気、口呼気の指示(筋緊張の緩和)
・強引な整復は下顎骨折の原因となる
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固定法・
後療法
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・整復後は固定をし関節運動の制限をして安静時に理学療法を行う
・2週間程度は固い食べ物は避ける
・早期の固定除去、早期の開口運動 ⇛ 反復性脱臼のリスクが高まる
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B.後方脱臼
特徴
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・極めてまれ
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発生機序
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・開口時に前方から音外部に受けた強力な打撃(ボクシング等)により発生
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症状
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・下顎が後方に移動
・開口、咬合不能
・下顎等が側頭骨乳様突起鼓室部間、骨正外耳孔上などに転位
・下顎骨骨折、外耳道壁の骨折を合併することもある
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整復法
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・前方脱臼と同様に下顎骨を把持し前下方に十分に牽引し整復
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合併症
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・下顎骨骨折
・頭蓋底骨折、外耳道前壁の骨折
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注意点
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・上記合併症がある場合には専門医に緊急搬送
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C.側方脱臼
特徴
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・骨折の合併症として見られるもので単独脱臼は極めてまれ
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症状
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・下顎は後退
・前歯部が開口し咬合不能
・下顎運動障害を認める
・下顎頭は下顎窩外側法又は内側法に触知
・脱臼は触診及びX線で確認される
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