頭部・顔面の骨折
A.頭蓋骨骨折
分類
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頭蓋冠骨折
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・直達外力が多い
・亀裂骨折、陥没骨折(小児では陥凹骨折)
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頭蓋底骨折
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・介達外力が多い
・亀裂骨折
・前頭蓋底骨折、中頭蓋底骨折、後頭蓋底骨折に分類される
→中頭蓋底骨折である側頭骨の錐体部骨折が頭蓋底骨折の大部分を占める
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症状及び
注意点
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・骨折部を中心とした血腫の形成、限局性圧痛、変形触知(陥没骨折)
・脳神経の損傷症状を調べる必要がある(視神経、顔面神経、耳介神経など)
・小児の場合は頭部外傷の発生頻度が高い、また頭蓋骨が柔らかく陥凹骨折となるものが多い
・骨折のあるなしにかかわらず頭部外傷の場合は24~48時間の急激な変化(嘔吐、意識消失、大きないびき)に対する監視が必要
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応急処置
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・絶対安静
・移送する場合は頭部を高位にして毛布などで周囲を固定し頭部の動揺を防ぐ
・早急に専門医に委ねる
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合併症
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脳震盪
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・頭部に衝撃を受けた直後に起こる一過性の神経機能麻痺
・一般的なものは数分で治る
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脳挫傷
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・頭部を強打して外傷を受けた際に頭蓋骨内部で脳が衝撃を受けて脳本体に損傷を生じる病態
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急性硬膜外血腫
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・硬膜と頭蓋骨との間に血腫が形成
・頭蓋骨骨折に合併し頭部外傷として極めて重症に分類される
・血腫生成まで時間がかかるため意識清明期(lucid
interval)を伴う
・CTでは凸レンズ型の血腫が見られる
・治療は開頭血腫除去術
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急性硬膜下血腫
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・硬膜と脳の間に血腫が形成
・一般に受傷の部位と反対側に形成されることが多い
・受傷直後より意識障害を呈することも多々ある(目眩、嘔吐、悪心など)
・意識清明期は無い
・CTでは凹レンズ型(三日月型)の血腫
・治療は穿頭血腫除去術、開頭血腫除去術
・死亡率が高く、予後不良
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B.眼窩底破裂骨折
眼窩の構成
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・頬骨、上顎骨、涙骨、篩骨、前頭骨、口蓋骨、蝶形骨
・下縁は上顎骨で形成され比較的丈夫で骨折は起こしにくい
・眼窩底は骨の厚みが薄く外傷で眼球が受けた圧力で容易に骨折する
⇛ これらを眼窩底破裂骨折と言い眼窩内側と眼窩底に多い
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発生機序
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・ボールやパンチの眼球の直接打撃により受けた眼窩内の圧力の波及による
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症状及び
注意点
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・眼窩底破裂骨折では一般に患側の眼球が陥凹し眼窩内出血や浮腫による瞼の腫脹によって瞼裂が狭小化
・運動障害では眼球の上転障害が見られ、これに伴う複視や視野障害が見られる
・眼窩下神経領域の感覚障害により頬から上口唇に痺れを感じる
・診断には単純X線撮影、頭部CT、三次元CT、MRIによる画像診断が必要
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応急処置
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・この骨折が疑われる場合は頭蓋骨骨折として処置を行い早急に専門医に委ねる
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合併症
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・脳震盪
・脳挫傷
・眼窩下神経障害
・視神経障害
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C.上顎骨骨折
特徴
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・直達外力による骨折がほとんど
・上顎洞の影響で複雑骨折になりやすい
・Le
Fort型のII型、III型では逆行性感染の危険性がある
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分類
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Le
Fort型
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I型
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・顔面下部骨折によって下顎骨歯槽骨折をきたしたもので上顎が下後方に転位する
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II型
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・顔面中央部の陥凹と咬合不全を起こす
・鼻、篩骨骨折の合併で髄液漏が見られる
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III型
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・顔面上部打撲によって顔面と頭蓋との骨性連結が絶たれた状態で髄液漏が見られる
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上顎骨矢状骨折
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症状
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・顔面部の損傷であり内出血が大きく腫脹が高度で顔貌が変化する
・II型、III型では骨片転位による顔貌の変化を認める
・ルフォール型では咀嚼障害や咬合不全が見られ言語障害、下顎運動障害を伴う
・上顎歯牙をつまんで動かすと骨片とともに可動性が見られ顎動揺を認める
・鼻、篩骨骨折を合併したII型、III型では髄液鼻漏を生じやすい
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応急処置
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・この骨折が疑われる場合は頭蓋骨折として処置を行い早急に専門医に委ねる必要がある
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合併症
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・脳震盪
・脳挫傷
・眼窩下神経障害
・視神経障害
・気道閉塞
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D.頬骨および頬骨弓骨折
特徴
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・殆どの場合、頬骨体部骨折は頬骨前頭縫合部、頬骨弓、上顎頬骨縫合部の3ヶ所の隣接骨との接合部に骨折が見られる
・頬骨弓単独骨折では多くの場合、骨折線が3ヶ所に見られV字型に陥没する
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分類
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頬骨体部骨折
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頬骨弓単独骨折
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症状
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・損傷部の内出血により高度な腫脹と皮下出血斑を認める
・体部骨折での骨片転位は咬筋の牽引で内下方へ転位し顔貌の変化が見られる
・体部骨折では眼窩の拡大に伴い眼球が陥没、複視、視野狭窄も合併
・頬骨弓単独骨折では陥没した頬骨弓によって裏側にある側頭筋が圧迫され開口障害を伴う
・眼窩下神経損傷を合併したときは頬から上口唇に痺れ
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診断上の注意点
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・近隣の鼻骨、上顎骨、眼窩からの骨折線の波及があるので同時に診察
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応急処置
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・この骨折が疑われる場合は頭蓋骨骨折として処置を行い早急に専門医に委ねる
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治療法
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・転位の大きなものは観血療法
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合併症
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・脳震盪
・脳挫傷
・眼窩下神経障害
・視神経障害
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E.鼻骨骨折・鼻軟骨骨折
発生頻度・分類
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鞍鼻型
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発生頻度 高
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正面から外力を受けたもの
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斜鼻型
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発生頻度 低
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やや斜め方向から外力を受けたもの
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症状
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・外見上、鼻稜部が湾曲又は平鼻となり醜形を呈する
・高度な腫脹及び圧痛が見られ、眼窩部に皮下出血斑が出現
・鼻出血はほぼ必発し鼻開が見られる
・受傷後、時間の経過と供の腫脹が増大し変形などの骨折症状が認めにくくなるので診断には十分注意する
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治療法
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・出来るだけ早期に鉗子か細めの丸塗り箸、または針金の8番線に滅菌したガーゼか綿花を巻いて鼻孔に挿入
・挿入物を利用し鼻孔の中から転位に応じた方向に持ち上げ矯正する、または挿入物をガイドとして外側から母指、示指で湾曲を矯正、鼻筋を整えて整復
・ガーゼや綿花でタンポンを作り鼻孔から挿入、整復位を保持
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整復後の注意点
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・患者自身に鼻部が受傷以前の形状に戻ったか確認させる
・眼窩部周辺の損傷なので耳鼻咽喉科、脳神経外科、眼科への受診を指示
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F.下顎骨骨折
特徴
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・下顎骨骨折は顔面骨折の中で発生頻度が高い骨折である
・体部骨折では開放性骨折が多く、下顎枝部骨折では閉鎖性骨折が多い
・20歳代の発生頻度が高く、10歳未満及び50歳以上の頻度は低い
・僅かな転位の残存でも咬合不全を残しやすい
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分類
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下顎骨骨体部骨折
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正中部骨折
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犬歯部骨折、オトガイ孔骨折
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大臼歯部骨折
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下顎角部骨折
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下顎枝部骨折
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関節突起部骨折
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筋突起部骨折
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発生頻度
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・体部骨折が約6割強、下顎枝部骨折が4割弱
・下顎枝部骨折の中では関節突起に関わるものが殆どで発生頻度が一番高い
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発生機序
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・直達外力が多く、強打、激突などが原因
・歯を食いしばった状態では骨折を起こしにくい
・顎関節脱臼整復時に下顎枝部骨折を起こすことがある
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症状
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・咬合異常
・顔貌の変形
・開口障害、嚥下障害、唾液流出
・骨折の異常可動性と軋轢音、限局性圧痛
・骨折部真上歯肉部の出血、裂創などを伴う
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治療法
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・咬合不全を残さないことを主眼に治療
・上顎歯列・下顎歯列を銀線で締結(顎間固定)
・咬合不全があれば観血療法を行う
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合併症
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・顎関節脱臼
・歯列の転位による咀嚼障害(咬合不全)
・下歯槽神経の損傷によるオトガイ部皮膚の感覚障害、神経様痛覚
・気道閉塞
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予後
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・関節骨頭などの骨折が見過ごされると後日開口運動障害を残す
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