2013年7月21日日曜日

関節の損傷2

B.関節損傷の概説
・関節の損傷は従来から脱臼或いは捻挫という用語で捉えられることが多かった

捻挫の定義
骨と骨の間に起こる急激な捻れ、或いは激しい外力による関節周辺の関節包や靭帯の損傷を言う

1.関節損傷に加わる力
1.急性
瞬発的な力によって発生するもの
・正常の可動域を超えた関節運動を強制された時に発生することが多い
2.亜急性
損傷と認知できないような力が繰り返し加わって損傷が発生するもの
・徐々に臨床症状が現れてくる場合と突然症状が現れる場合がある

C.関節損傷の分類
1.関節の性状による分類
1.外傷性関節損傷
正常な関節に外力が作用して発生
・急性の損傷と亜急性の損傷に大別できる
2.その他の関節損傷
関節が何らかの要因により脆弱になっている際に軽微な外力で発生

2.関節損傷部と創部との交通の有無による分類
1.閉鎖性関節損傷(単純関節損傷、皮下関節損傷)
・創部と関節損傷部との交通のないもの
2.開放性関節損傷(複雑関節損傷)
・創部との関節損傷部との交通のあるもの

3.外力の働いた部位による分類
1.直達外力による損傷
・打撲、衝撃、墜落などの純正の直接的外力によって関節に損傷を生じるもの
2.介達外力による損傷
・大部分の関節損傷が該当する
・関節を構成する一方の骨に外力が加わるパターン
・損傷を受ける反対側に外力が加わるパターン

4.外力の働き方による分類
1.関節に正常の関節運動範囲を超える外力が作用した場合(過伸展、過屈曲)
2.異常運動を強制する外力が作用した場合(膝関節の内転、外転外力)
3.生理的範囲内でも繰り返し外力が作用した場合
4.当該組織に直接外力が作用した場合


5.関節損傷の経過による分類
1.新鮮関節損傷
・炎症症状を呈する、およそ数日以内のもの
2.陳旧性関節損傷
・明確な定義はないが、数週間経過したもの

F.関節構成組織損傷
F-1靭帯、関節包の損傷
1.分類と症状
a.損傷の程度による分類
I
・靭帯線維の微小損傷
・疼痛、腫脹(出血)は少なく、圧痛、機能障害も軽い
・不安定性はない
II
・靭帯の部分断裂
・機能障害を認める
・不安定性は軽度から中等度
III
・靭帯の完全断裂
・機能障害は高度
・不安定性は著明

b.症状
・疼痛、腫脹、皮下出血斑、限局性圧痛、関節血腫
・疼痛が著しい場合は関節の機能障害を伴う

2.合併症
・関節周囲の筋、腱、神経、脈管の損傷の有無の確認

4.経過と予後
I
・的確な施術(RICE処置)を行うことで治癒するものが殆ど
II
・的確な施術を行った場合にも、あるいはこれらの損傷を軽視すれば
長く症状は残存し関節機能障害を遺すことがある(関節の動揺性、関節変形)
III
・観血療法が行われることが多い
RICE処置
Rest:安静
Ice:冷却
Compression:圧迫
Elevation:挙上

F-2.関節周囲を通過あるいは起始停止する筋、腱の損傷
・急性の原因より亜急性の原因で発生するもののほうが多く見られる
・就労、スポーツ活動による反復外力が主で
腱の骨への付着部や腱が骨との摩擦を強いられる部位で高率に発生する


F-3.関節軟骨損傷
・関節軟骨の損傷は関節軟骨部に限局した骨軟骨損傷に加え関節部の骨損傷も考慮する
・明らかな骨損傷を合併している場合にはその損傷を見落とすことは少ない
・関節軟骨部のみ損傷している場合、見落とし、或いは靭帯などの損傷に隠れ確定できないものがある

1.発生頻度
・急性、亜急性のいずれの原因でも発生し基礎的状態が要因となることが多い
・年齢、性別、その他就業、スポーツ活動などの環境が大きく関与

2.発生機序
介達外力
関節相互面の衝突と関節相互面の離開による靭帯、筋、腱の牽引力に分類
直達外力
関節が特定の肢位におかれ、関節軟骨の一部が直接力を受けやすい状態の場合に発生
・関節軟骨に直接力が働くことは少なく介達外力による発生が多い

3.分類
1.骨損傷を合併していない軟骨損傷
・関節軟骨には血管分布はなく、神経は乏しいため損傷を受けた際の臨床症状を患者自身も施術者側も認識しにくい
2.骨損傷を合併している軟骨損傷
・骨損傷を合併するものは骨損傷による臨床症状を呈し合併していないものに比べ初期段階に病態の判断が可能である

6.軟骨損傷の治癒機序
損傷が生じると通常の創傷治癒機転が働かず自己修復能力は著しく乏しい
 関節軟骨は血管や神経を欠き軟骨細胞が基質に覆われその移動が妨げられているため
軟骨下組織まで損傷が達していない場合
修復反応は起こらず治癒しない
軟骨下組織まで損傷が達していない場合
・骨髄からの細胞が流入し修復反応が観察される
・但し形成される軟骨組織は本来の硝子軟骨ではなく繊維軟骨であり関節軟骨としての十分な機能を果たし得ないと考えられている

7.後遺症と予後
・関節拘縮や強直に加え、持続性関節痛や外傷性関節炎、変形性関節症発生の素地となる
・骨損傷を合併しているものでは骨片転位に伴う変形癒合が見られる

F-4.その他の関節構成組織の損傷
関節唇
急性、亜急性いずれの外力によっても発生
ほとんどが介達外力による発生
関節半月、関節円板
膝の場合、介達外力に急性損傷が多く単独損傷、靭帯損傷と合併して損傷する
腰部の場合は介達外力による亜急性損傷が多い
滑液包
急性、亜急性いずれの外力によって発生し肩、膝関節に多い
直接的な繰り返し外力ex.踵部に加わる靴による外力
介達的な繰り返し外力ex.鵞足部


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